2013年10月3日木曜日

辻占売りの拍子木を打つ音


高校(1 年生)時代の交換日記から

Ted: 1951 年 12 月 29 日(土)雪、30 日(日)晴れ

 大したこともしていないのに、時間が不足だと感じる。

 午前 Octo が英語の宿題(To write a brief biography of a great man or woman)を持って来て、見てくれという。Frantz Liszt について書いてあった。このピアノの名演奏家の名を無断で借り、彼の後継者であると広告して演奏しようとした婦人を Liszt は許した上に、彼女にピアノを教えたというエピソードが書かれていた。三、四箇所直してやったあと、解析、国語、英語の教科書を次々に出して、少し話し合う。Octo や Twelve の家へぼくが行ったときよりは、彼らがぼくの家へ来たときの方が、沈黙の時間を少なくする、あるいは完全になくすることがしやすいのは、なぜだろう。(注 1)
 Octo は帽子を被って来ることを忘れたのを忘れて、「あっ、帽子忘れた」と、ぼくの部屋へ戻りかけた。これは Twelve も学校でときどきやる失敗だ。

 母の微熱が続く。
 辻占売りの拍子木を打つ音が聞こえる……。(注 2)
引用時の注
  1. 「ホームグラウンド」の気安さで、連想がよく働き、無口な私も話題を見つけやすかったのだろう。
  2. 辻占売りといえば、太平洋戦争中の幼年時代に講談社の絵本で読んだ乃木希典の伝記に、辻占売りをしていた親孝行な少年を乃木将軍が助けたという明治時代の話があったのを思い出す。戦後もまだ、辻占売りがいたのだろうか。

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